去年の3月11日なにしてた VICTIMS MAY BE LESS
「地震前にうちのペットがいつもと違う行動をした」。地震発生前に起こす動物の異常行動を、地震予知の手段として役立てようと研究を続けている人物がいる。麻布大学獣医学部の太田光明教授(63)だ。南海トラフ巨大地震対策では、最近「予測は困難」と結論づけられた。だが、あらゆる予知の可能性を求めて、そうした動物の異常行動の研究についても、耳を傾けてみる価値はありそうだ。【城西国際大・阿部奈津美、写真は武蔵大・鈴木康平】
●「阪神」がきっかけ
1995年1月17日の阪神大震災発生の時、太田教授は堺市にある大阪府立大学に在籍していた。キャンパス内は震度6の揺れを観測。教授は、地震発生から約10日後、飼い主と一緒に同行避難できず放置された動物や、飼うことが困難になり放置されたペットを救護する目的で、ボランティアとして、飼い主がいる避難所へ足を運んだ。そこで飼い主から動物の異常行動について数多く耳にした。
翌月、飼い主からの声を元に本格的に調査を始めようと思い立った。地震発生前に異常行動が見られなかったか、日本愛玩動物協会が避難施設で聞き取り調査を行った。すると犬の約25%、猫の約40%が、地震発生前にいつもとは違う行動を示したことがわかった。さらにその後、兵庫県内の獣医を対象に行った調査でも同様の結果が得られた。「これは地震の予知に使えるのではないか!と考えついた」と太田教授は語る。
何の根拠もなしに動物は異常行動を起こさない。では地震発生前に動物は一体何を感じ取り、異常行動に至ったのか。そこで太田教授は「再現実験」と呼ばれる実験を行った。動物は、地震発生前に何らかの物理的な刺激や科学的な変化を感じ取ったものと仮定して、地震発生時に生じる電磁波を起こし、15年間実験を続けた。だが、際だったデータを得ることはできず、実験を断念した。
動物は複合的、あるいは人間が感じることができない、より大事なものを感じ取っているのかもしれない。人間が計り知れないものを感じていると考えるようになった。
●中国の事例に驚く
そのころ、75年に中国で発生した海城地震で、国家地震局が動物の異常行動で地震を予知し、被害を最小限にとどめた事例を聞きつけ、2度にわたり現地取材へ出掛けた。「馬はいななき2本足で立ち上がり、ニワトリは空を飛んだ」。ここでも動物の異常行動についてのエピソードを耳にした。中国では過去に動物の異常行動などによって予知に20回近く成功していると聞き、太田教授は動物を地震予知に役立てる中国と、いまだ動物の地震予知が浸透していない日本との大きな差を実感したという。
帰国後、毎日採取するデータの中から結びつけられるものがないかと考え、研究方針を変更。現在は学生と共に、時間や手間をかけずに目で見てわかる変化を計測できる方法として、牛の乳量計測のデータ採取を畜産試験所から地道に行っている。太田教授は特別なことは行わず、動物をよく観察し、まずはペットの異常行動を確認したらいち早く情報を共有できるよう周囲と連絡をとり、情報を広めてほしいと呼びかけている。
●組織的取り組みを
「日本人は、動物が地震を予知していることを本気にしない人が多い。東日本大震災後も、その風潮は変わっていない」と、太田教授は現在の地震予知対策への態勢に警鐘を鳴らす。「さまざまなデータを重ね合わせることによって、地震予知に結びつける努力を国全体でしてほしい。動物の予知能力について興味・関心を持ち、研究できる組織作りを考える必要がある」
動物の未知なる能力と可能性にかける情熱は消えそうにない。
「地震前にうちのペットがいつもと違う行動をした」。地震発生前に起こす動物の異常行動を、地震予知の手段として役立てようと研究を続けている人物がいる。麻布大学獣医学部の太田光明教授(63)だ。南海トラフ巨大地震対策では、最近「予測は困難」と結論づけられた。だが、あらゆる予知の可能性を求めて、そうした動物の異常行動の研究についても、耳を傾けてみる価値はありそうだ。【城西国際大・阿部奈津美、写真は武蔵大・鈴木康平】
●「阪神」がきっかけ
1995年1月17日の阪神大震災発生の時、太田教授は堺市にある大阪府立大学に在籍していた。キャンパス内は震度6の揺れを観測。教授は、地震発生から約10日後、飼い主と一緒に同行避難できず放置された動物や、飼うことが困難になり放置されたペットを救護する目的で、ボランティアとして、飼い主がいる避難所へ足を運んだ。そこで飼い主から動物の異常行動について数多く耳にした。
翌月、飼い主からの声を元に本格的に調査を始めようと思い立った。地震発生前に異常行動が見られなかったか、日本愛玩動物協会が避難施設で聞き取り調査を行った。すると犬の約25%、猫の約40%が、地震発生前にいつもとは違う行動を示したことがわかった。さらにその後、兵庫県内の獣医を対象に行った調査でも同様の結果が得られた。「これは地震の予知に使えるのではないか!と考えついた」と太田教授は語る。
何の根拠もなしに動物は異常行動を起こさない。では地震発生前に動物は一体何を感じ取り、異常行動に至ったのか。そこで太田教授は「再現実験」と呼ばれる実験を行った。動物は、地震発生前に何らかの物理的な刺激や科学的な変化を感じ取ったものと仮定して、地震発生時に生じる電磁波を起こし、15年間実験を続けた。だが、際だったデータを得ることはできず、実験を断念した。
動物は複合的、あるいは人間が感じることができない、より大事なものを感じ取っているのかもしれない。人間が計り知れないものを感じていると考えるようになった。
●中国の事例に驚く
そのころ、75年に中国で発生した海城地震で、国家地震局が動物の異常行動で地震を予知し、被害を最小限にとどめた事例を聞きつけ、2度にわたり現地取材へ出掛けた。「馬はいななき2本足で立ち上がり、ニワトリは空を飛んだ」。ここでも動物の異常行動についてのエピソードを耳にした。中国では過去に動物の異常行動などによって予知に20回近く成功していると聞き、太田教授は動物を地震予知に役立てる中国と、いまだ動物の地震予知が浸透していない日本との大きな差を実感したという。
帰国後、毎日採取するデータの中から結びつけられるものがないかと考え、研究方針を変更。現在は学生と共に、時間や手間をかけずに目で見てわかる変化を計測できる方法として、牛の乳量計測のデータ採取を畜産試験所から地道に行っている。太田教授は特別なことは行わず、動物をよく観察し、まずはペットの異常行動を確認したらいち早く情報を共有できるよう周囲と連絡をとり、情報を広めてほしいと呼びかけている。
●組織的取り組みを
「日本人は、動物が地震を予知していることを本気にしない人が多い。東日本大震災後も、その風潮は変わっていない」と、太田教授は現在の地震予知対策への態勢に警鐘を鳴らす。「さまざまなデータを重ね合わせることによって、地震予知に結びつける努力を国全体でしてほしい。動物の予知能力について興味・関心を持ち、研究できる組織作りを考える必要がある」
動物の未知なる能力と可能性にかける情熱は消えそうにない。
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